転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
「あの時、君はきちんと礼をしてくれた。俺は当然のことをしただけだし、気にするほどのことじゃない」

 黙り込んでしまったヴィオラの沈黙を、リヒャルトは無理に破ろうとはしなかった。

 やがて馬車は、昨日訪れたばかりの太陽宮ではなく満月宮に到着する。

「わわ、な、何するんですか!」

「足が痛いんだから歩かせるわけにはいかない」

 リヒャルトに抱き上げられ、ヴィオラは慌てた。子供じゃないんだから、抱っこされなくても自分の足で歩くことができる。

「た、ただの靴擦れですよ! たいした怪我じゃないです!」

「靴擦れを起こさせたのは、こちらの責任だからな」

 足をばたつかせるけれど、下ろしてもらえない。リヒャルトに抱えられたまま満月級に入ると、出迎えてくれたのは、何人かの騎士だった。

(……満月宮は、皇帝と皇妃の住まいよね。皇帝はもっぱら、ティアンネ妃の宮――なんて言ったかな――で生活してるって話だけど)

 皇帝がめったに来ないからか、ここは空気が沈んでいるみたいに感じられた。

「ここだ」

 リヒャルトがヴィオラを連れて行ったのは、小さな部屋だった。

(……いい香りがする)

 いとせず鼻がひくりとした。ひょっとしたら、厨房が近くにあるのかもしれない。

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