転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
「いつか、連れて行ってやろうか。大きな船で。そうしたら、きっと自由になれるんだろうな」

「……リヒャルト様?」

 今、一瞬。見えてはいけないものが見えてしまったような気がした。自由になれるのだろうと口にした彼は、いつになく沈鬱な面持ちで。

 故郷に帰ることができないヴィオラだからこそ、そう感じるのかもしれなかった。

「今、なにを考えたんですか?」

「いや、なんでもない。そうだな――、とにかく、今回はヴィオラのおかげで助かった。なにかお礼をしなければならないな」

「お礼なんか必要ないです。それより……」

 抱えられたリヒャルトの肩にそっと顔を埋めてみる。もっと力があればよかったのに。そうしたら、きっと、彼の助けになることができた。



 騎士団の訓練の見学はまた後日にすることにして、再び馬に乗せられる。

「近いうちに母上とのお茶会に来てくれないか?」

「皇妃陛下とですか?」

 突然の誘いなので驚いた。

 リヒャルトの母であるアデリナ皇妃は、皇妃という立場にありながらも、表舞台に姿を見せることはほとんどない。それは、彼女の出自が関係しているのだろう。

 彼女の母国、ウルミナ王国はとっくに滅んでしまっている。今、皇妃の地位にとどまっていられるのは、皇妃に対する皇帝の思いやりであるとの噂だ。

「かまいません、じゃなかった……はい、喜んでお受けします」

 リヒャルトにはかなりお世話になってしまっている。断るなんてできない。

 ――それに。

 この国で生き残るには、まずは情報収集が必要だ。

 満月宮からほとんど出ることはないとはいえ、皇妃は皇妃。少なくとも人質のような役割でこの国に来ているヴィオラより知っていることはたくさんあるはずだ。

(……私はここで生きていかないといけないんだから)

 考えようによっては、いい機会なのかもしれない。

 それきり、クィアトール宮に着くまで、ヴィオラは口を開こうとはしなかった。

 

 ◇ ◇ ◇
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