転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
「――ああ、懐かしいわ! こんな味だった。いつも紙にくるんだものを懐に入れていてね。砂浜で待ち合わせるのだけれど、いつも半分分けてくれたの。そうそう、この豆のクリームの甘さが大好きで」

 どうやら、ヴィオラの見立ては間違っていなかったらしい。ほっとして、ヴィオラはお茶のカップを取り上げた。

「やっぱりこのお菓子だったんですね。私は、どら焼きって呼んでます。昔の楽器に『銅鑼』というものがあって、それに形が似ているからつけられたそうですよ」

 今、ヴィオラが語ったのは、いくつかあるどら焼きの語源のひとつだ。

 定説ではないし、この世界に銅鑼が存在するかはわからないけれど、何かの説明はした方がいいと思ったのである。

「そうね、違う名前だった気もするけど……でも、どら焼きも可愛くていいわ。たしかに、似ていると言えば、似ているかも」

 どうやら、こちらの世界にも銅鑼は存在していたらしい。皇妃がそれで納得してくれたのでほっとした。

「しかし、豆をこう甘くするとは……ミナホ国の食文化は、俺達のものとはだいぶ違っているようだな」

「こちらの主食はパンですけれど、向こうでは米が主食なんですよね。そうそう、お米も買ってきたので、また違うお菓子も作れると思います。挟んであるクリームのことを餡って言うんですけど、餡をつけたお団子は食べたことありますか?」

「お団子? ええ、串に刺したものでしょう。あと、甘くてしょっぱいタレがついているのをいただいたことがあるわ」

 たぶんそれはみたらし団子のことだ。幼い頃の友人のおかげで、皇妃はかなり和菓子に馴染んでいるみたいだ。

「機会があれば、それも作ってみます」

「まあ、では、また近いうちに遊びに来てくれる?」

 首をかしげてヴィオラを見つめる皇妃は、先日会った時よりも生き生きとして見える。

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