転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
「皇妃様のご都合がよろしければ」

 目を伏せて、そう返す。リヒャルトの母が、少しでも元気になってくれたのならよかった。

「私が菓子職人に焼かせたクッキーも食べて? おいしく焼けていると思うわ」

「いただきます」

 チョコチップの入ったクッキーがテーブルに出されている。それからレーズンのクッキーと、アーモンドを飾りに乗せたクッキーも。

 ひと口サイズのケーキには生クリームが絞られ、ブドウが飾りに乗せられている。

「あとは、栗を使ったお菓子もあるんですよね……」

「あら、そうなの? 栗は焼き栗にするくらいだわ。あとは茹でるか……リヒャルトは知ってる?」

「俺は、菓子には詳しくないので」

 リヒャルトの返事に、二個目のどら焼きを手に取った皇妃が首をかしげる。

「あらそうだったかしら……? ごめんなさいね、知らなくて」

「いえ、それは仕方のないことですよ」

(あ、やっぱりそうだ)

 二人の会話を横から聞いていてヴィオラは思った。この二人、家族としての会話がほとんどないようだ。

(たしかに、一緒に食べるのは難しいんだろうけど)

 咲綾の実家では、両親は店を切り盛りしていたから、食事はたいてい祖母とふたりだった。

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