氷雨逆巻く天つ風の夜に【完】
姉が妊娠した――
長い間不妊に苦しんでいたことは覚えているし、だが自分が貢献したというのはよく分からない――
話が一区切りつくと、如月と泉は多くある客間のひとつを割り当てられて休息を摂っていた。
「どうした朧、腹が痛いのか?」
なんとなく自身の腹を撫でていた朧は、氷雨に声をかけられて見上げると、まだ混乱しつつも首を振った。
「いえ、なんとなく…」
「ああ、如月のことびっくりだよなー。晴明の治療が上手くいったのか。文出して良かったぜ」
「文?なんのことですか?」
――その辺の記憶があやふやなため、あまり深く泉邸で過ごした日々のことを朧に話していない氷雨は、長い指で頬をかいて肩を竦めた。
「や、晴明が治療してくれて良かったなーって話。幽玄町の屋敷の出入りも解禁されたし、できたら近くで産んでほしいよな。んでできたら性格は泉に似てほしい…」
ぼそっと呟いた氷雨と如月が何やら仲が良いのは少し気になっていた。
あんな風にべたべた氷雨の身体を触れて羨ましい、と思っていた朧は、ぷくっと頬を膨らませて突然氷雨の二の腕を掴んだ。
「痛い!痛いです朧さん!爪食い込んでます!」
「如月姉様とはどんな関係なんですか?やけに親しく見えましたけど?」
「え?ちょっと待て、何を疑ってるんだ…まさかあいつと俺が…」
身震いした氷雨は、目を尖らせて嫉妬をむき出しにしてくる朧の頭を撫でて顔を覗き込むと、にかっと笑った。
「あいつは俺の弟子。ま、短い間だったけどな。妙な勘繰りするんじゃねえよ恐ろしい」
「…ふうん…」
「全然納得してないみたいだけど、俺にはちゃんと好いた女が居ますから」
「……ふうん……」
さらに不穏な空気になったが、氷雨は終始からから笑っていた。
惚れた女に嫉妬されているのだから、面白くて仕方なかった。
長い間不妊に苦しんでいたことは覚えているし、だが自分が貢献したというのはよく分からない――
話が一区切りつくと、如月と泉は多くある客間のひとつを割り当てられて休息を摂っていた。
「どうした朧、腹が痛いのか?」
なんとなく自身の腹を撫でていた朧は、氷雨に声をかけられて見上げると、まだ混乱しつつも首を振った。
「いえ、なんとなく…」
「ああ、如月のことびっくりだよなー。晴明の治療が上手くいったのか。文出して良かったぜ」
「文?なんのことですか?」
――その辺の記憶があやふやなため、あまり深く泉邸で過ごした日々のことを朧に話していない氷雨は、長い指で頬をかいて肩を竦めた。
「や、晴明が治療してくれて良かったなーって話。幽玄町の屋敷の出入りも解禁されたし、できたら近くで産んでほしいよな。んでできたら性格は泉に似てほしい…」
ぼそっと呟いた氷雨と如月が何やら仲が良いのは少し気になっていた。
あんな風にべたべた氷雨の身体を触れて羨ましい、と思っていた朧は、ぷくっと頬を膨らませて突然氷雨の二の腕を掴んだ。
「痛い!痛いです朧さん!爪食い込んでます!」
「如月姉様とはどんな関係なんですか?やけに親しく見えましたけど?」
「え?ちょっと待て、何を疑ってるんだ…まさかあいつと俺が…」
身震いした氷雨は、目を尖らせて嫉妬をむき出しにしてくる朧の頭を撫でて顔を覗き込むと、にかっと笑った。
「あいつは俺の弟子。ま、短い間だったけどな。妙な勘繰りするんじゃねえよ恐ろしい」
「…ふうん…」
「全然納得してないみたいだけど、俺にはちゃんと好いた女が居ますから」
「……ふうん……」
さらに不穏な空気になったが、氷雨は終始からから笑っていた。
惚れた女に嫉妬されているのだから、面白くて仕方なかった。