氷雨逆巻く天つ風の夜に【完】
もうこの説明も何度目になるかな、と前置きした氷雨は、一緒に床に入って腕枕をしてやりながら事の経緯を話し始めた。
朧はそれに熱心に聞き入りながらも氷雨の胸にすり寄ったり頬に触れたり忙しなく、氷雨は好き勝手にさせていた。
ふたりは現在夫婦であって夫婦ではない――そういう認識だった如月は、朧の様子を見に部屋を訪れたものの、ふたりが床に入って何やら話をしているのを見て足を止めた。
「?雪男の記憶がないのではなかったのか…?」
そのまま忍び足で居間に戻った如月は、朔と天満の間に挟まってそれを話すと、ふたりは顔を見合わせて笑った。
「朧は毎日雪男を忘れては恋をして、の繰り返しだ。‟雪男さんのことを教えて下さい”って俺たち何度言われた?」
「もう数えてないですよ、だって毎日だもん。ふたりで床に入ってたって?じゃあ今日はうまくいったんだね」
「うまくいかない日もあるんですか?」
「あるよ。朧がもじもじして雪男に積極的になれない日だってある。でも次の日は積極的になったり。見ていて楽しいけど、そろそろ現状を打破しないとね」
そうなんですか、と呟いた如月は、今の片隅で氷雨が新調した大きめの揺り籠の中で眠っている望に目を遣った。
最近とんと大人しく、氷雨が近付いても牙を剥いたりしない。
朧の体調は反比例して日増しに良くなっているということで、末妹を溺愛する兄姉たちとしては喜ばしいことだが――
「そろそろ外に居る奴の対処をしよう。敵対すれば俺が仕留める」
「僕も手伝います。だけど今まで様子を見てるだけだし、敵対してくるでしょうか」
朔は腕を組んで座椅子に身体を預けた。
――敵対はしてこないかもしれないが、現状望が妖としての能力を失いつつあり、そうなれば傍に置いてもいいかもしれない、と思っていた。
「泉が復旧すれば状況は変わってくる。伊能に急がせよう」
いつまでも幽玄町を留守にするわけにもいかない。
彼らは一致団結して頷き合った。
朧はそれに熱心に聞き入りながらも氷雨の胸にすり寄ったり頬に触れたり忙しなく、氷雨は好き勝手にさせていた。
ふたりは現在夫婦であって夫婦ではない――そういう認識だった如月は、朧の様子を見に部屋を訪れたものの、ふたりが床に入って何やら話をしているのを見て足を止めた。
「?雪男の記憶がないのではなかったのか…?」
そのまま忍び足で居間に戻った如月は、朔と天満の間に挟まってそれを話すと、ふたりは顔を見合わせて笑った。
「朧は毎日雪男を忘れては恋をして、の繰り返しだ。‟雪男さんのことを教えて下さい”って俺たち何度言われた?」
「もう数えてないですよ、だって毎日だもん。ふたりで床に入ってたって?じゃあ今日はうまくいったんだね」
「うまくいかない日もあるんですか?」
「あるよ。朧がもじもじして雪男に積極的になれない日だってある。でも次の日は積極的になったり。見ていて楽しいけど、そろそろ現状を打破しないとね」
そうなんですか、と呟いた如月は、今の片隅で氷雨が新調した大きめの揺り籠の中で眠っている望に目を遣った。
最近とんと大人しく、氷雨が近付いても牙を剥いたりしない。
朧の体調は反比例して日増しに良くなっているということで、末妹を溺愛する兄姉たちとしては喜ばしいことだが――
「そろそろ外に居る奴の対処をしよう。敵対すれば俺が仕留める」
「僕も手伝います。だけど今まで様子を見てるだけだし、敵対してくるでしょうか」
朔は腕を組んで座椅子に身体を預けた。
――敵対はしてこないかもしれないが、現状望が妖としての能力を失いつつあり、そうなれば傍に置いてもいいかもしれない、と思っていた。
「泉が復旧すれば状況は変わってくる。伊能に急がせよう」
いつまでも幽玄町を留守にするわけにもいかない。
彼らは一致団結して頷き合った。