氷雨逆巻く天つ風の夜に【完】
とても元気な男の子だった。
髪は氷雨に似て真っ青で、目も氷雨に似ていて真っ青。
肌の色も抜けるように白く、ただ僅かに額の中心が盛り上がっていて、鬼の血もちゃんと引いているのが分かった。
「可愛い…!ものすごく可愛い…っ」
産み落とした瞬間に痛みはなくなった。
元気な産声を聞いていると無性に泣きたくなって唇を噛み締める朧の胸元に晴明が生まれたての赤子を乗せた。
「元気な子だ。それになんと強い目よ」
赤子の目は開いていたがまだ見えているわけではないらしく、その真っ青な目の中にたゆたう妖気の瞬きの強さに晴明は息を呑んだ。
「俺の…俺たちの子…」
氷雨もまた身体の底からこみ上げてくる歓喜の渦に呑まれそうになり、我が子を腕に抱きたくなって手を出したり引っ込めたりしていた。
今まで生まれたての朔たちを気軽に抱っこしてきたけれど――なんだか怖くてできなかった。
「氷雨さんにそっくり。ふふ、罪づくりな子になりますね」
「生まれてすぐ女難の相があるとか大概心配なんだけど。きっちり教育しないとな」
しばらくすると赤子は泣き止み、処置を終えた晴明はぬるま湯を張った盥を指して朧の背に手をあてて起こしてやった。
「さあ、身体を優しく洗ってあげなさい。息吹たちが今か今かと部屋の外で待っているからもたもたしていると乱入してくるよ」
朧はすぐ壊れてしまいそうな我が子を腕に抱いて恐々ながらもぬるま湯に浸してやった。
気持ちいいのか目を閉じてじっとしているその姿があまりにも可愛らしく、氷雨とふたりで飽きもせず眺めていると、とうとう我慢できなくなった息吹たちが乱入してきた。
「朧ちゃん!赤ちゃんは……ああーっ、ものすごく可愛い!雪ちゃんそっくり!予想通り!」
一気に騒々しくなった部屋が明るさに包まれた。
髪は氷雨に似て真っ青で、目も氷雨に似ていて真っ青。
肌の色も抜けるように白く、ただ僅かに額の中心が盛り上がっていて、鬼の血もちゃんと引いているのが分かった。
「可愛い…!ものすごく可愛い…っ」
産み落とした瞬間に痛みはなくなった。
元気な産声を聞いていると無性に泣きたくなって唇を噛み締める朧の胸元に晴明が生まれたての赤子を乗せた。
「元気な子だ。それになんと強い目よ」
赤子の目は開いていたがまだ見えているわけではないらしく、その真っ青な目の中にたゆたう妖気の瞬きの強さに晴明は息を呑んだ。
「俺の…俺たちの子…」
氷雨もまた身体の底からこみ上げてくる歓喜の渦に呑まれそうになり、我が子を腕に抱きたくなって手を出したり引っ込めたりしていた。
今まで生まれたての朔たちを気軽に抱っこしてきたけれど――なんだか怖くてできなかった。
「氷雨さんにそっくり。ふふ、罪づくりな子になりますね」
「生まれてすぐ女難の相があるとか大概心配なんだけど。きっちり教育しないとな」
しばらくすると赤子は泣き止み、処置を終えた晴明はぬるま湯を張った盥を指して朧の背に手をあてて起こしてやった。
「さあ、身体を優しく洗ってあげなさい。息吹たちが今か今かと部屋の外で待っているからもたもたしていると乱入してくるよ」
朧はすぐ壊れてしまいそうな我が子を腕に抱いて恐々ながらもぬるま湯に浸してやった。
気持ちいいのか目を閉じてじっとしているその姿があまりにも可愛らしく、氷雨とふたりで飽きもせず眺めていると、とうとう我慢できなくなった息吹たちが乱入してきた。
「朧ちゃん!赤ちゃんは……ああーっ、ものすごく可愛い!雪ちゃんそっくり!予想通り!」
一気に騒々しくなった部屋が明るさに包まれた。