氷雨逆巻く天つ風の夜に【完】
それから時が経ち――
成長した氷輪は、予想通り父親の氷雨に瓜二つの容姿となり、それはもう女の百鬼たちをざわつかせていた。
物憂げな表情で縁側に座って黙り込んでいる様はかなり絵になるが、本人自身は何も考えてないだけ。
父の跡を受け継いで現当主の右腕となり、父譲りの力を存分に振るっていた。
「よう兄弟ー」
氷輪にそう声をかけたのは――幼馴染の白雷だ。
晴明と山姫との間に産まれた白雷は白狐としての能力が高く、ふかふかの耳と尻尾を揺らしながら氷輪の隣に座った。
「お前に告白しようかって悩んでる百鬼が居たんだけど、まさか受けないよな?」
「なんで?」
「なんでって…お前は俺の妹を嫁に貰うんだろうがー!」
首に腕を回されてぎりぎり絞められた氷輪は、白雷の腕を叩いて降参すると、ふるふる首を振った。
「そんな約束してないけど」
「しーまーしーたー。んでお前は‟相手が居なければ”って言いましたー」
白雷は傍若無人で闊達で明るい。
氷輪は天邪鬼でぼうっとしていることが多い。
相反するふたりのように見えるが主と共に戦線に立っている時の連携は誰もが認めるところだった。
「そんな約束…した?」
「少なくとも俺は覚えてるぞー。俺の妹お前が大好きなんだから絶対嫁に貰ってもらうからなー」
ふうと息をついた氷輪は、実の所まだあまり女に興味がなく、金色の目を爛々と光らせている白雷の尻尾をにぎにぎしてにこっと笑った。
「お前の妹変態だからやだ」
「変態なのは認める!だけど美人だろー?可愛いだろー!?お前のために料理も勉強してるし、もし万が一妹を振ったら…絶交だー!」
…絶交とは程度が低い。
今まで何度も絶交宣言をされている氷輪は、ふんと鼻を鳴らして白雷の尻尾を抓った。
「変態が治ったら考える」
「治るか!癖なんだぞ!」
主の部屋の障子が開いて顔を見せると、ふたりは喧嘩をやめて笑顔で出迎えた。
成長した氷輪は、予想通り父親の氷雨に瓜二つの容姿となり、それはもう女の百鬼たちをざわつかせていた。
物憂げな表情で縁側に座って黙り込んでいる様はかなり絵になるが、本人自身は何も考えてないだけ。
父の跡を受け継いで現当主の右腕となり、父譲りの力を存分に振るっていた。
「よう兄弟ー」
氷輪にそう声をかけたのは――幼馴染の白雷だ。
晴明と山姫との間に産まれた白雷は白狐としての能力が高く、ふかふかの耳と尻尾を揺らしながら氷輪の隣に座った。
「お前に告白しようかって悩んでる百鬼が居たんだけど、まさか受けないよな?」
「なんで?」
「なんでって…お前は俺の妹を嫁に貰うんだろうがー!」
首に腕を回されてぎりぎり絞められた氷輪は、白雷の腕を叩いて降参すると、ふるふる首を振った。
「そんな約束してないけど」
「しーまーしーたー。んでお前は‟相手が居なければ”って言いましたー」
白雷は傍若無人で闊達で明るい。
氷輪は天邪鬼でぼうっとしていることが多い。
相反するふたりのように見えるが主と共に戦線に立っている時の連携は誰もが認めるところだった。
「そんな約束…した?」
「少なくとも俺は覚えてるぞー。俺の妹お前が大好きなんだから絶対嫁に貰ってもらうからなー」
ふうと息をついた氷輪は、実の所まだあまり女に興味がなく、金色の目を爛々と光らせている白雷の尻尾をにぎにぎしてにこっと笑った。
「お前の妹変態だからやだ」
「変態なのは認める!だけど美人だろー?可愛いだろー!?お前のために料理も勉強してるし、もし万が一妹を振ったら…絶交だー!」
…絶交とは程度が低い。
今まで何度も絶交宣言をされている氷輪は、ふんと鼻を鳴らして白雷の尻尾を抓った。
「変態が治ったら考える」
「治るか!癖なんだぞ!」
主の部屋の障子が開いて顔を見せると、ふたりは喧嘩をやめて笑顔で出迎えた。