秀才男子は恋が苦手。
「おしっ、じゃぁ詳~~~しく聞かせてもらおうか」
朝。ドカッと俺の前の席に腰をおろした千葉が、何やら引きつった顔で聞いてきた。
「…………は?」
「は?じゃねぇよ!昨日!家にあいっ…」
そこでハッとしたように口をつぐみ、キョロキョと辺りを見渡した後、俺に顔を近づけ小声になる千葉。
「亜衣ちゃん家に連れ込んだんだろーがっ!で、どうだった?まさか…致したのか!?」
「……は?」
「だから、は?じゃねんだよ!進捗状況を聞いてんだよ俺は!」
「進捗状況って…別に何もしてないけど」
本のページを捲りながら答えると、千葉が「あっ何だ…そっか!」とホッとしたようにそうかそうかと何度も頷いた。
「…何をホッとしてる」
「そりゃー筒井ごときに先越されるわけにはいかねぇからな?」
「…お前さぁ」
パタン、と本を閉じた。椅子にふんぞり返った千葉が「ん?」と呑気そうに俺に顔を向ける。
「…お前、11年くらいずっと本田夏海(千葉の彼女)のことが好きだったんだよな」
「ん?あぁまーな!出会い7才だからな!7才!」
「よくそんなにずっと好きでいられたよな」
「は?」
意味がわからない、とでも言いたげな千葉の顔。
「だってそうだろ。相手にもし、他に好きな奴が出来たら…とか考えたことなかったのかよ」