秀才男子は恋が苦手。
「そりゃまぁ…不安になったことなんて何百回も何千回もあるけど」
ボリボリと頭の後ろを掻く千葉。
「でも好きなもんは仕方ねーじゃん?
頭でどうこう考えて、理屈で嫌いになれるんじゃ苦労しねーよ」
…理屈で嫌いになれるんじゃ苦労しない、か…。
「ま、その分両想いになったときの幸せは半端じゃねー…って、どうした筒井」
「…別に、トイレ」
急に立ち上がった俺に合わせて、なぜか一緒に立ち上がる千葉。
「お前どうした?今日なんかおかしいけど…も、もしや…昨日やっぱり亜衣ちゃんと何かあったのか!?」
「…だから何もないって」
「本当に!?
お母さんに全部言ってみなさい!ん!?」
…いつお前が俺のお母さんになった。
勝手に肩にまわされた千葉の腕を振り払った。
「だから何もない。あるわけないだろ」
俺は千葉とは違う。
理性でちゃんとストップがかかる。
他に好きな奴がいる女に。
…手、出すほどバカじゃない。