隠れ蓑〜Another story〜
それからは先輩や津川さんにバレないようにコソコソと準備を始めた。
家で書面を作成して、同じ想いの同志を募った。
同期の仲のいい子やお客様でよく会話を交わす信頼のある方に片っ端に声を掛けた。
どんなに頑張っても、津川さんにバレたらもともこもない。
営業から人事に異動したからといっても、全くロビーを通らない訳じゃないし、用もないのに先輩の様子を見に来るときもある。
だから慎重に進めなければいけない。
そんなある日、ロッカーで書面がどの位集まったか確認していると知った声に背後から声を掛けられた。
「山口さん。最近コソコソしてるみたいだけど、一体何を企んでるの?」
振り返った先には、腕を組んでいる山下先輩の姿があって咄嗟に書面を背中に隠した。
勘のいい山下先輩にこの事がバレれば、先輩や津川さんの耳に入ってしまう可能が高い。
だから冷静を装って書面をさっとバックに閉まって、微笑んだ。
「山下先輩、お疲れ様です!今帰りですか?今日は先輩は一緒じゃないんですか?あ!もしかして津川さんに取られちゃいましたっ?もういっそ同棲しちゃえばいいのに〜〜。」