隠れ蓑〜Another story〜
「、、意外。莉子ちゃんって彼氏いると思ってたけど。片想いとかするんだ。」
その核心のついた言い方に、驚いて目を見開く。
何故私が彼を好きだとバレたのだろう。
あんなにいつも一緒の晶帆にもバレていなかったのに。
あまりの勘の良さに、何も言えずに黙りこんでいると更に言葉を続けた。
「確かにあの店長さん、いい男だけど。女を見る目は無さそうだね。、、それに莉子ちゃんに片想いとか似合わないよ。早く忘れて次に行った方がいい。」
「っ、、!店長の悪口はやめて下さい。それに片想いって似合うとか似合わせないとかじゃないんです!!私だって好きで片想いしてる訳じゃない。でもきっぱり振られないと、どうしようもないんです。、、柿本さんだってそうだったんでしょ?自分の気持ちに区切りをつけたかったんですよね!?だからあんな事したんですよねっ!?!?」
柄にもなくムキになってしまった事に気がついて、目を伏せた。
「、、すみません。今のは忘れて下さい。それよりビール追加してもいいですか?私こう見えても結構飲むんです。」
「いや、こっちこそごめんね。勿論、じゃんじゃん飲んで。遠慮せずにさ!」
「、、言いましたね?後悔しても遅いですからねっ!!すみませーん。生ビール大ジョッキ追加で!」
それから柿本さんは運ばれたきた料理を美味しいそうにたいらげ、私が飲んでいる姿を楽しそうに眺めていた。
自分だけ飲んでいるという光景に、さすがに後ろめたい気持ちになり声を掛ける。
「そろそろ帰りましょうか?」
「え?もう満足したの?全然酔ってないように見えるけど。もしかしてもう限界?」
「限界じゃないですけど、、流石に1人で飲み続けるのは如何なものかと。私に付き合ってただ座ってるのもツライかなと思いまして。」
「なぁんだ、そんなこと?最初に言ったけど俺、人が飲んでる姿見るの好きだから気にしないで飲んでよ。それに人が飲んでる姿を見ると新しいデザインのインスピレーションが浮かぶんだよね、不思議と。だから限界じゃないならもう少し付き合ってよ。俺の創作意欲の為にもさ?」
そんな風に言われたら、嫌だなんて言えない。