隠れ蓑〜Another story〜
「じゃあもう少しだけ。」
「うん、思う存分どうぞ。帰りもちゃんと送り届けるから。」
これが普通の男性の言葉だったら信用ならない言葉だけど、柿本さんの言葉なら何故か不思議と信用できた。
だって晶帆のことを本気で好きでいた人だから。
「、、はい。ありがとうございます。すみませーん、ハイボール下さい。」
「あ、俺も何か追加しようかな。おススメは?」
「ここのデザート、全部美味しいです。」
「お、食後にいいね。ならこのパンケーキを1つ。」
「ハイボールとパンケーキですねっ!畏まりました!!」
すぐに運ばれてきたハイボールを躊躇なく口をつけて、枝豆に手を伸ばすと柿本さんは砕けたように笑っていた。
「、、なんですか?柿本さんが思う存分っていったんじゃないですか。」
「いや、いい飲みっぷりだなぁって。飲んでないこっちも気分がいいよ。それにしても俺の事、全然意識してしてないでしょ。まぁそれがまた、楽しいんだけどさ。」
「意識?そんなのする必要あります?」
加減な顔で柿本さんを見ると、更に吹き出して笑った。
「いや、ないね。だからこんなに楽しいのか。晶帆とはまた違った楽しさがあるよ。」
「柿本さんって変な人ですね。」
「うん、よく言われる。」
思った事を口に出すと、目を細めて優しい表情を浮かべた。
失恋したばかりの柿本さんの事を少し心配していたけど、楽しそうにしているならいいやと胸を撫で下ろした。