隠れ蓑〜Another story〜
それから私は飲み続けた。
柿本さんもパンケーキを食べて、また私が飲んでいる姿を穏やかな表情で眺めている。
すると手に持っていたバックから突然ノートと鉛筆を取り出し、何かを書き始めた。
「何書いてるんですか?」
「今、デザインが降りてきたからすぐに書き留めたくてね。莉子ちゃんは気にせず飲んでて?」
そう言われても、カリスマデザイナーのデザイン画を描いている所を生で見れる機会なんてそうない。
飲むのを止めつい、柿本さんの手元を凝視してしまう。
繊細な鉛筆さばきで、どんどん形になっていくデザイン画。
そして普段見たことのない真剣な表情に思わずドキッとしてしまう。
「、、素敵な服ですね。そんな服、きて見たいです。」
そして思わず溢れた本音に、真剣に書いていた柿本さんが手を止めて顔を上げた。
「ありがとう、、。良かったら着てよ。莉子ちゃんはスタイルもいいから何着ても似合うよ。」
「いえ、私には似合いませんよ。だって柿本さんの作る服は女性らしいデザインが多いですから。私じゃなくて晶帆に似合いそうな服のイメージです。」
「そう、、かな。そういうの無意識だったな。確かにうちのブランドは女性らしいデザインの服しかないかもね。」