隠れ蓑〜Another story〜
店内を見渡すと、私達以外誰もいなくてあんなに賑やかだった店内は静まり返っている。
「すみませんっ、、また閉店時間過ぎてましたよね?!直ぐに帰ります!!」
「そんなに慌てなくて大丈夫だよ。それよりも莉子ちゃんに大事な話があるんだ。」
帰る支度を急ごうとすると、柿本さんからその手をやんわり止められた。
「、、ちゃんと店長さんの話、聞かなきゃダメだよ。逃げても前になんか進めない。」
その言葉に心臓がドクドクと脈打つ。
店長の手元をそっと見ると、隣にいる女性と握り合っていてようやく状況を理解した。
とうとうこの日が来てしまった。
、、私の長い長い片想いが終わる日が。
震える声で小さく呟いた。
「大事な話って何ですか、、?」
「うん、、実は彼女と結婚するんだ。来年の夏に。莉子ちゃんにはどうしても直接報告したくてさ!」
屈託のない笑顔を向けられて、その眩しさに思わずに俯いてしまう。
こんな店長の幸せそうな顔、、初めて見た。
ずっと好きだった人。
そんな大好きな人の幸せをそうな笑顔を見れて嬉しいと思えた。