隠れ蓑〜Another story〜


彼と迎える朝が、こんなに幸せな気持ちになるんだと初めて知った。

例えば意外と低血圧で朝が得意じゃないことやピンと跳ねた可愛い寝癖、普段よりくぐもった声など私しか知らない彼を見ると、少しだけ特別な存在になれたような気がしてそれが更に彼への愛しさを増していく。







〝偽りの恋人〟だった頃が懐かしい。

今ではもう、朝目が覚めて彼が隣にいないことなんて想像も出来ないほどだ。







待ちくたびれているであろう彼の事を思い出して、早く夕食を作ろうと急いで髪を乾かし浴室から飛び出した。

脱衣所を出ると、壁に寄りかかっている彼がいてドキッと心臓が跳ねる。





「圭くんっ、、?どうしたの?」

「遅いから心配した。」

「ごめんね?お腹すいたよね!?直ぐ作るからっ、、!」





急いでキッキンに向おうと彼の横を通り過ぎようとすると手首を掴まれた。




「そんなに急がなくていいから、ちゃんと髪乾かして。まだ少し濡れてる。」


そう言って脱衣所まで引っ張られて、ドライヤーを当てられる。





「じ、自分でするよっ!?圭くん疲れてるでしょ?!?!」

「疲れてるよ。だから早く晶帆に癒されたいのに全然戻ってこないから、、。こうしてれば晶帆の近くにいれるし、晶帆の綺麗な髪を触るの好きだから。」

「っ、、、!」



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