隠れ蓑〜Another story〜
車内は会話は無く音楽だけが響いていたが、穏やかな空気が心地いい。
手を繋ぎながら、まだ何度かしか訪れたことのない彼の部屋に足を踏み入れた。
「、、飲み物、コーヒーでいい?」
「あ、私するよ。疲れてるでしょう?圭くんは座ってて?」
「じゃあお願いする。」
ソファーに座ってネクタイを緩めている彼を横目にコーヒーを淹れる。
コーヒー豆もマグカップの場所も最近ようやく覚えて、そのちょっとした事も嬉しく感じてしまう。
「お待たせ。はい、圭くんの分。」
そう言って直接手渡すと、目を細めてそれを受け取ってくれる。
「晶帆も早く隣に座って。話がしたい。」
真っ直ぐに熱い視線を向けられて、緊張しながらも彼の横に腰掛けた。
「、、正直、実感ないんだ。人の大勢いる前だったから周りを気にして断れなかったんじゃないかって。、、でも撤回とか絶対認めないから。だから、、、ごめん。もう離してやれない。」
そういって左手を取った彼。
そしてダイヤが輝く指輪が薬指にはめられた。
「え、、、?どうして、、これ、、いつのまに、、、?」
「かなり前から用意してた。、、出張先で買ったものだから。」
目が合った彼の瞳がユラユラと揺れていて、思わず抱きついた。
「、、今更撤回とか困るよ、、。だって昼からずっと仕事に身が入らなくてフワフワした気持ちでずっと圭くんのこと、待ってたのに。そんな悲しいこと言わないで?私、圭くんの奥さんになりたいです、、、。」