隠れ蓑〜Another story〜
私に向かって初めて見せた柔らかい笑顔なのに、なんでこんなに悲しいのかな。
私に向けてくれた笑顔でも、私の為に向けた笑顔じゃないからだ。
だからこんなにも胸が痛くて、全身から血の気が引いていくのだろう。
「先輩、顔色が悪いですよっ!?医務室で休まれて下さい。今日は比較的にお客様が少ない曜日ですから私1人でも大丈夫です。」
「ううん、大丈夫。それよりなんで、、。」
〝圭と付き合いだしたの?〟
〝圭の事、いつから好きだったの?〟
〝本気で好きだったの?〟
〝気持ちがないのに付き合うなんて相手に失礼だって言ってなかった?〟
言いたい事は山ほどあったが、ふと自分が言った言葉を思い出し口を噤んだ。
、、西村ちゃんの背中を押したのは私だ。
私が進めたんだ。
恋人を作ることを。
気軽に考えろって助言までした。
結果、西村ちゃんは私の助言通りしただけだ。
それなのに私が文句なんて言えない。