隠れ蓑〜Another story〜
振り返ってみると、緊張した面持ちの彼女が遠慮気味に立っていた。
「おっ、、お忙しい所にすみませんっ、、!庶務課の者ですが、、そのっ、、書類不備がありましたので訂正をお願いしたく参りましたっ、、。こちらの書類を営業部長までお願いできますでしょうかっ、、?」
勢いよく頭を下げ、書類を差し出す彼女に近づき書類を受け取る。
「あぁ、分かった。部長には渡しておくから。」
素っ気ない言葉を掛けると、彼女は身体を震わせ一歩後ろに下がった。
そして顔を上げずに声を上げた。
「本当にお忙しい時にお手を止めさせましてっすみませんでしたっ、、!!では、失礼しますっ、、!」
そう言って走り去っていく彼女。
素っ気ない態度を取ったのは、女に好意を持たれないようにする為。
ついいつもの癖でそんな態度をとってしまったが、女にあんな態度を取られたのは初めてだった。
一度もこちらを見ようともせず、俺から早く離れないといったオーラを醸してきた彼女。
普通の女なら、少しでも会話を長引かせようとあれこれ言葉を掛けてくるが彼女が発した言葉はほぼ謝罪だけ。
そして普通の女なら頬を染めたり、微笑みかけてくるところだが走り去っていく時に見えた彼女の横顔は怯えた表情を浮かべていた。