隠れ蓑〜Another story〜


こんな事、生まれて初めての経験で彼女が走り去っていった誰もいない廊下をただ茫然と仕事も忘れ暫く眺めていたのだった。




それからだ。


俺が彼女を目で追うようになったのは。










少し小柄な彼女なのに、何故か何処にいても目がいってしまう。







書類を抱え切れないほど持って歩く姿。

パソコンに真剣な表情で向かう姿。

自販機の前で座っている姿。

社食を食べている姿。

ロビーを通り退社していく姿。









そんな彼女の姿を目で追うにつれ、見えてきた彼女の置かれた現状。



常に独りで、誰かと楽しそうに会話をしているのを見た事がない。

それどころか女達からは距離を取られ、男達からは執拗に声を掛けられる姿。





どんな嫌な目に遭っても、真剣に仕事に取り組む彼女の姿勢には驚かされた。


そして彼女と二度目の接触で、完全に彼女に恋に落ちた。






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