隠れ蓑〜Another story〜
「言い忘れていたが、、、お前を部長に昇進させる話が上層部で上がっている。」
「、、、営業の、、ですか?」
「〝人事部〟のだ。、、正直な話、営業部からお前を抜けば営業は多大なる戦力を失う事になる。だからこれは数年先の話だ。お前も知ってる通り、人事部の部長は取締役に匹敵するほどの役職だ。人事部長を経験したものは確実に取締役になるのかうちの決まりだ。これまで以上に仕事に追われて、その上、、人に嫌われる役職だ。だが私も上層部と同じ意見でお前には向いていると思っている。、、、頭に入れておきなさい。話は以上だ。」
そう言って、手元の資料に視線を戻した叔父に小さく頭を下げ社長室を後にした。
まさかそんな話が上がっているなんて知らなかった。
いつかは営業部長に昇進すべく努力してきたが部長は部長でもまさかの〝人事部〟だなんて、、まさに寝耳に水だ。
それにまさか社のトップである叔父にまで、彼女との仲を取り持って貰おうとしている輩がいたなんて。
あんな目立つ所で仕事させていることが、それを更に増加させている原因だ。
この先、、もし本当に人事部長への昇進の声が掛かったのなら彼女は直ぐにでも違う場所へ異動させる。
そんな公私混同な事を考えながら最上階のフロアを降りた。