隠れ蓑〜Another story〜
女はその場にズルズルと座り込み、全身を小刻みに震わせている。
そして女に背を向けて呟いた。
『言い忘れていたが、、、俺はここのトップである社長の甥だ。だからもうこの会社にお前の居場所なんかない。分かったらさっさと消えろ。』
そう言い残し、その場を去った。
次の日、あの女は退職願を提出してこの会社から去って行った。
会社を辞めるだけで済んだ事を泣いて喜んで欲しいくらいだ。
そしてどこから漏れたのか、、俺が社長の甥であることが噂されるようになった。
こうなればもう、開き直るしかない。
寧ろこの後ろ盾を晶帆を守る為の武器として使ってやる。
ただ、、、晶帆の耳にだけは入れたくないという気持ちもあった。
普通の女にとっては社長の甥という肩書きは最高のオプションになるのだろうが、彼女の性格上、、、最高のオプションはマイナスポイントでしかない。
最悪、別れを切り出されるかもしれない。
それを心底恐れていた。