隠れ蓑〜Another story〜
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久しぶりに訪れた社員食堂で、愛しい後ろ姿を見つけた。
手を伸ばしたくなるほど綺麗な黒髪は、キューティクルで天使の輪ができていた。
後ろ姿を見ただけで、その日の疲れが一気に抜けて口角が上がるのが自分でも分かる。
食券を買い、その券をカウンターに提出して料理を待っていると近くに座る男がある一点を見つめていることに気づいた。
その視線を辿れば、彼女の席。
小さく舌打ちをして少し乱暴に食器を持った。
その音に気づいた男が、こちらを振り返り焦ったように視線を逸らした。
あの事件以来、少しは鬱陶しい輩は減ったもののそれでも彼女に視線が集まる。
言葉を交わす訳でもなく、直接接触している訳でもないのに、、、湧き上がる感情。
人はただ見られるだけで、自分じゃない誰かの瞳に愛しい人を映されるだけで嫉妬できるんだと、、、最近知った。