隠れ蓑〜Another story〜
親友である山下さんと何か楽しそうな表情で会話をしているところを見るかぎり、あれから恐れをなして彼女を傷つけようとする馬鹿な女は現れていないらしい。
こちらに頬を染めながら見てくる女達の視線を冷たくあしらって彼女の席に近づく。
「晶帆、、と山下さん。今昼休憩?」
優しく声をかけながら晶帆の隣に腰を下ろし、目を細める。
それに対して、少し恥ずかしそうに頬を染め俯く晶帆と呆れたような表情を浮かべる山下さん。
「け、圭くんっ、、!お疲れです。社食、、珍しいね?今日はゆっくり座って食事できるんだっ!良かった!!」
顔を上げて自分の事のように嬉しそうな声を上げる晶帆につい手を伸ばす。
そしてそっと手首に触れる。
「、、包帯はもういいの?湿布は?痛みはもうない?痕は?残らなかった、、?」
「えっ!?、、これ?大丈夫だよ?だって擦り傷だったし全然平気っ!!足滑らして階段から落ちるなんて凄い恥ずかしいよねっ!」
手首を捲って見せながら笑顔で答えた。
きっと痛みも酷かっただろうし、もしかしたら痕だって残っているかもしれない怪我。
それなのに何もなかったかのように笑顔を見せる健気な彼女が本当に好きだと思った。