剛力家の三兄弟
ホテルへと向かう車の中で、今日観る葉瀬流について、憲剛が話し聞かせてくれた。
葉瀬流は、とても有名らしく、華道界の中でも、とても由緒ある大きな流派らしく、全国には沢山のお弟子さんが居ると教えてくれた。
そんな名高い流派の華道展を観に来ているのに、真奈美はお店の事が気になって、折角の作品を観賞する余裕など少しもなかった。
「葉瀬家と剛力家は古い付き合いで、俺も前家元には良く可愛がって貰ったよ!
多分、今日居ると思うから、後で紹介するよ?」
「憲剛さんやっぱり・・・」
真奈美の言葉を受け付けないとばかりに、憲剛はまくしたてる様に話していた。
「葉瀬流の今の家元ってさ、恭之助って言って、幼稚園から高校まで一緒でさ!
学生の頃は一緒にバカもやったけど、良いやつでさ、恭之助にも紹介するよ?あっ恭之助の嫁さんにも!」
家元と憲剛さんが同級生って事は・・・
禎憲さんとも・・・同級生・・?
もう少しでランチの時間になるけど、禎憲さん大丈夫かな…
禎憲の事を考えて居ると、寂しそうに憲剛は呟いた。まるで、真奈美を諭す様に。
「そろそろ諦めて良いんじゃないの?禎憲の事」
え?
『おー憲剛じゃん!』
「よっ恭之助!久しぶり。綺麗な嫁さん何処?」
この人が葉瀬流家元?
禎憲さん達に負けずと、とてもイケメンで、袴姿はとても凛々しく、禎憲さん達より落ち着いて見える。
『あー今ちょっと、支部長達の相手して貰ってる、後で挨拶させるよ?
それより、お前もやっと・・あれ?なんだフィアンセを連れて来たかと思ったけど、親戚の子か?』
「いや、真奈美はこれでも、23歳なんだ。
今日はお前のとこの、爺様へ紹介しようと思ってな?」
憲剛さん・・
『そうか、お前もやっとか?』
葉瀬恭之助が真奈美へ視線を向けた時、真奈美はこのまま紹介されてしまっては、後戻り出来ない気がした。
「憲剛さんごめんなさい。私やっぱり帰ります!」
真奈美は、葉瀬恭之助へも頭を下げ、その場から逃げる様に去った。
そして、タクシーへ飛び乗ると店へと向かった。