剛力家の三兄弟
「いくら相手を想っていても、自分が幸せじゃないと、いけないと思います!」
「じゃ、あんたは幸せなの?
他の女とデートに出かける男を、毎週見送ってて?」
「はい。心は私の元にあると信じてますから!」
「あんた馬鹿じゃないの?
浮気してる男の心が、あんたの元にある訳無いじゃない!」
「浮気かどうか、それを決めるのは、私です!
心は私の元にあると、信じられればそれで良い。
でもユリさんは、禎憲さんの心が自分にない事、知ってますよね?
だから必死に、物証を私に見せつけて、私から去ってくれることを願ってる。
でも、それは無理ですよ?」
「はぁ゛?」
「私、禎憲さんの側にいるだけで、幸せですから!」
真奈美の言葉に、ユリは苦虫を噛み潰した様な顔をしていた。
「あんたの負けだな?」
聞こえて来た声に振り向けば、そこには明憲が立っていた。
えっ!
明憲さん・・・
いつから居たの?
「あんたが何を言おうと、何をしようと、真奈美には効き目ないらしい。
もう、とっくにあんたも振られてるんだ、いい加減諦めたら?」
「なんで、あんたに言われなきゃいけないのよ!」
「俺でダメなら、本人に言ってもらうしかないな?」
本人からっ・・て・・?
「禎憲、お前は今のままで幸せか?」
「・・・・」
厨房から出て来ていた禎憲は、明憲の問いかけに何も答えられずにいた。
「真奈美が言った様に、“ 自分が幸せじゃないと相手を幸せに出来ない ” って、俺もそう思うよ?
お前が何を考えての行動か知らないけど、今のままなら、彼女も真奈美も、そしてお前自身も、誰も幸せにならない?」と、明憲は言う。
明憲に言われた禎憲は、ひとつ深呼吸すると、真奈美の側へ近づくと、真奈美へ頭を下げた。
「ユリの言う事を聞かないと、真奈美が悲しむ事になるって言われて・・」
真奈美が窃盗犯だと言いふらしたら、明憲の事務所や剛力家への信頼が損なわれる。そうなると、真奈美が悲しむ事になる。そうさせたくなければ、自分の言う事を聞けと、ユリに言われていたと禎憲は話した。
「真奈美が悲しむくらいなら、俺が我慢してれば良い事だと思ってた」