剛力家の三兄弟
禎憲を殴った手が痛くて、仕事にならない真奈美は、明憲に送ってもらい家に帰る事にした。
「手、大丈夫か?」
「ええ、大丈夫です」
「手より心が痛いよな?」
そう。手より心が痛い。
禎憲さんが苦しんでいた事に、全然気付かずにいた自分が情けなくて、出来る事なら、自分を殴ってやりたかった。
明憲は、家と反対方向の海へと、車を走らせると、堤防沿いで車を止めた。
ここは?
「好きなだけ泣いて良いよ?
俺、煙草吸ってくるから?」
真奈美にそう言うと、明憲は車を降りて行った。
何処へ行くのかと目で追っていると、明憲は堤防へ座り、煙草を加えたが、火を点けることはしなかった。
一瞬、明憲の顔に光るものが見えた気がしたが、潮風が明憲の髪をなぜ、綺麗な顔を隠してしまった。
まるで、泣いてる明憲の顔を隠している様だった。
1時間程して、戻って来た明憲の手には、コンビニの袋が有り、そこにはタオルと、氷と水が入っていた。
「冷やさないと、腫れるぞ?」
「ごめんなさい・・・」
「そこはありがとうだろ?」
こんなに心配してくれて・・
こんな私を好きになってくれて・・
「うん。ありがとう!」
その後、二人はずっと無言のままだった。
だが、車を降りる際、明憲は真奈美の手を握った。
ん?
「真奈美・・」
「明憲さん?」
「ごめん。何でもない。
もう少し、禎憲にお灸据えてやれよ?」と明憲は微笑んだ。
「そのつもりです!」と言って真奈美は微笑み返した。
その日の夕食時、早速、真奈美による、禎憲へのお仕置きが始まった。