剛力家の三兄弟

真奈美の休みは、基本週末の1日だけ。
今日は、雅人の兄が社会奉仕で、町内の掃除に参加すると聞いて、真奈美も参加する為に、明憲について、事務所の有る○△町まで来ていた。

「あっ雅人君、おはよう。雅人君も参加するんだね?」

「はい。真奈美さんも?」

「うん。一緒に頑張ろうね?住んでる町が綺麗なのは気持ちいいもんね?」

「あんたが頑張るのは、この後の豚汁の為だろう?」と、言う明憲の言葉に“違います!”と、真奈美は頬を膨らませる。
そんな真奈美を笑う明憲へ、真奈美はゴミ袋と軍手を渡し一矢を報いる。

「お、俺は立会人として来てるだけで…」

「ナニ言ってるんですか?弁護士先生だろうと、猫の手よりマシですからね?この袋一杯になるまで、帰って来てダメですよ!」

「・・オマ…」真奈美の言葉に言葉を失う明憲だった。

「さぁ、雅人君、頑張ろう!」

2時間ほど町内や川沿いのゴミ拾いを行ない、それが終わると、夫人会の皆さんが作ってくれた豚汁とオニギリを頂く。

「お疲れ様です」

真奈美は労いの言葉と一緒にオニギリを明憲に差し出すが、明憲は、“いらない” といって受け取らない。

「大丈夫ですよ?ちゃんとラップ使って私が握りましたから」

明憲は、潔癖症で、知らない人間の作った物は一切食べる事が出来ない。その為、普段から外食もしない。今回の様にご好意で作って下さっても、見ず知らずの方々の握るオニギリなど、とても食べる事など出来ないのだ。

それに、明憲にとって、軍手をはめてとはいえゴミ拾いは、とても辛いものがあったのだ。

「あっ、上着の右のポケットに、アルコールのお手拭きが有りますから、出して使って下さい」

真奈美は両手が塞がってるからと、体をくの字にして、自分の上着ポケットから手拭きを出せと明憲に言う。

だが、他人のポケットへ手を入れる事など出来ず、
躊躇する明憲に、真奈美は、“早く” と、急かした。

「俺は帰ってから食べるから良い」

「良いんですか?皆さんのご好意を無にしても?ほら、みんな見てますよ?明憲さんが食べるのを?
オニギリだけでも食べてください。雅人君と雅人君のお兄さんの為にも?」

明憲は仕方なく真奈美のポケットへ手を入れた。





< 42 / 142 >

この作品をシェア

pagetop