剛力家の三兄弟

「真奈美さん!昨日、マスターとどこ行ったんですか⁉︎」

先週末まで、真奈美とは挨拶もせず、目さえ一切合わせなかったエミが、真奈美の顔を見るなり問いかけてきた。

「えっ?」

「昨日、マスターと手繋いでましたよね?それも恋人繋ぎで!マスターの事なんとも思ってないって言っといて、本当は付き合ってたんですか⁉︎」

「えっいつ?見間違いだよ…」
いつ…
何処で見られたんだろ?

「二人が恋人繋ぎしてたのを見たって!」

恋人繋ぎ…
!?

「恋人繋ぎなんてしてないよ?昨日は…新メニューに使う食器を見に行くからって、朝、突然付いて来いって言われて…一日中歩き回ってたら、疲れて歩けなくなったのを、仕方なく手を引いてくれたの。多分その時を見られたんだね?」

「じゃ、真奈美さんって本当にマスターと付き合って無いんですよね⁉︎」

「え?うん。付き合ってないよ?」

「ユリさん良かったですね?見間違いですって?
マスターの隣に立つには、真奈美さんはあまりにも童顔過ぎて、彼女って言うより、妹ですもんね?」と、エミはユリへ言った。

ユリさんに見られてたのか…
て、事はユリさんもランドに居た?
え?…
もしかして…
禎憲さんにキスされたとこ見られて…
それより、食器を見に行ったって言ったのマズたんじゃ…

「そ、そうですよ…禎憲さん達兄弟イケメン過ぎて、私が恋人になるなんて荷が重過ぎます。私もユリさんみたいに、美人に生まれてたら違ったかも知れませんが?」

「そう。私の見間違いだったのね?もう、この話は終わりにして、さぁ仕事しましょう?」

良かった…
禎憲さんとキスしてるところは見られて無かったんだ。

何とか誤魔化せたと思っていた真奈美は、この時のユリの心の内を知る由はなかった。

「真奈美さん!今後も、禎憲さんを横取りする様な事はしないで下さいよ⁉︎ 勿論、明憲さんの事も!私はまだ、チョコの件、許してませんからね!」
エミは強い口調で真奈美へ忠告した。

「・・うん。」




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