剛力家の三兄弟

真奈美は夢でも見ていたのかと、冷蔵庫の中を隅々まで確認したが、カツレツ用に仕入れていた牛肉も無くなっていた。

やっぱり肉が無いって事は夢なんかじゃなく、ちゃんと仕込んでいたんだ。
じゃ何故無くなってるの?

「最近色んな物が無くなってるのって、真奈美さんが、盗んでるからじゃ無いですか?」

「そんな…」
盗んでない!
そんな事しない!
盗んだ所で、私に何の得があるの?

「エミちゃん、仲間を疑うのは良くないわ?」

「でも、ユリさん…」

「今、誰かを疑うより、どうするかが先よ?
お客様も待っていらっしゃるんだもの?
あっそうだわ!
マスター、今日のランチは豚の生姜焼きにしましょう?
明日の分は、後で仕入れに行けば良いですし?」

たまたま昨日、良い豚肉が有ったからと、明日のランチ用に仕入れていた豚肉が有ったのだ。

「そうだな?
…仕方ない。今日は豚の生姜焼きにするか?
メニュー表と外のボード、書き換えてくれ!」

「すいません…私」

「謝るのは後だ。急いで準備するぞ?」

「はい…」

真奈美は野菜を切ろうと、厨房へ入ろうとした。
だが、ユリが、真奈美の前に出た。

「私が入りますので、真奈美さんはお客様に謝った来てくれますか?」と、ユリはにっこり笑った。

既にランチを注文しているお客様に、内容が変わる事を詫びなければいけない。

「はい…」

「ユリさんのお陰で、真奈美さん助かりましたね?
やっぱり真奈美さんより、ユリさんの方が頼りになるんですよ!
真奈美さんが来るまでは、ユリさんが仕込みも全てしてたんだから!
これで、マスターも良く分かったんじゃないんですか?」

何とか、その日はユリの機転で事なきを終えた。





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