剛力家の三兄弟
皆んなが居なくなった後、禎憲は真奈美にコーヒーを入れた。
「美味しい…初めてです」
「え?」
「禎憲さんに入れてもらったコーヒー飲むの」
「そうだったか?」
「あの・・1つ聞いて良いですか?」
「ん?」
「憲剛さんは兎も角、なんで、禎憲さんは法曹界へ進まなかったんですか?」
「ん・・進まなかった訳か・・?
1つ1つの事件には、必ず傷ついた被害者と罪を犯した被疑者がいる。
だが、必ずしも被害者が良い人間で、被疑者が悪い人間とは限らない。
ストーカー男に暴行うけた恋人(女)が、自ら命を絶ち、そのストーカー男を恨み恋人の仇を打つためにストーカーを傷つけたとしても…
代々守って来た店を、地上げ屋に嫌がらせを受け潰され、借金を苦に親が自殺して、地上げ屋を恨みから、子が地上げ屋を刺しても、どちらも被疑者として捕まえなくてはいけない。それが刑事の仕事だ」
確かにどんな理由があろうと、人を傷つける行為は許されない。傷つけてしまったら、その時点で犯罪者となる。
「俺には出来ない。
愛する者を失い、悲しみ苦しんで…その結果、相手を傷つける事しか出来なかった者を、俺には捕まえることなど出来ないから、刑事になろうと思わなかった。検事、判事も同じだ。
そんな弱い人間を、裁くことも出来ない弱い人間なんだよ、俺は・・」
「じゃ、弁護士は?
禎憲さんなら、人の気持ちが分かる。
それなら弱い人間を助けてあげる弁護士に?」
「弁護士も、同じだよ?
絶対、クロだと思っていても、依頼者がヤってないと言えば、同じ方向を見て戦わなくてはいけないんだ。有罪だろうと無罪を主張するか、減罰を求めて戦わなければならない」
そんな…
「法曹界では俺は生きられない。だから、何でも屋として生きる方が性に合ってるんだ。情けないだろ?」
「…良いんじゃないですか?」
「え?」
「探偵だろうと、何でも屋だろうと、人の為になってるじゃないですか?」