無愛想な同期の甘やかな恋情
「あの……最近、間中さんが糸山さんと一緒にいるの、よく見かけたので」


躊躇いながら続けると、彼は「ああ」と頷いて、目元を綻ばせた。


「ちょっと前から、付き合ってるんだ。今日はお互いに都合が合わなくてね。バラバラ」


間中さんが照れ臭そうに告げたのは、私にとって決定的な失恋の言葉。
私はきゅっと唇を噛んでから、目を伏せた。


「ちょっと前から、ですか。付き合い始めの時期って、少しでも一緒に過ごしたいですよね」


間中さんが、恥ずかしそうに「はは」と笑った。


「そう言う冴島さんは?」

「え?」

「彼氏、欲しくないの?」


直球で探られて、私は一瞬口ごもった。
逃げるように曖昧に首を傾げ、目線を逸らす私に、間中さんがふっと口角を上げる。


「冴島さんの恋人は、今のところは仕事ってことかな? でも、もったいないな」


彼はそれだけ言って、時間を気にしたのかやや急いで食べ始めた。
それを見て、私も冷やしたぬきうどんに視線を落とす。


「……あの。お幸せに」


失恋したのに。
私の胸に、それほど痛みは訪れなかった。
声は少し引っかかったけど、素直に祝福できた。
間中さんは、チラッと私に目を上げ、


「ありがとう」


短いお礼を呟く。
私も、彼に笑みを向けた。
それきり、私たちは目を合わせることもなく、それぞれのペースで食事を進めた。
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