無愛想な同期の甘やかな恋情
「この間、お前が置いて行った資料の検証結果。悪いけど、実験は補助員に頼んだ」

「あ……」


先週、私が一方的に置いてきた企画案。
あんな言い合いをしたのに、穂高君はちゃんと目を通してくれた。
ホッとするより先に、胸がきゅんとした。


なのに。


「結論から言うと、商品化にはハードルが高い」

「え……?」

「企画は通ると思う。でも、研究段階で難航する。それがわかってるから、研究員として止める」

「研究段階で?」


穂高君は目を伏せ、「そう」と頷く。
彼が言うには、原料の調達が難しく、代替案の研究にコストと時間がかかるそうだ。
そうなると、販売価格を上げざるを得ない。
現状では、商品化するメリットがないと、淡々と説明してくれた。


「そ、っか」


穂高君に返した第一声が、喉に詰まった。


「来年、再来年には可能になるかもしれない。だから、時間がある後輩に任せるとか、今はじっくり……」


がっくりとうなだれた私を、励まそうとしてくれたんだろう。
穂高君が、そう続けるけれど。


「ありがとう。わかった」


私は気を取り直して顔を上げた。
「え?」と、彼の訝し気な声が、頭上から降ってくる。


「穂高君の、言う通り。今は、『AQUA SILK』の商品を生み出すことに、専念すべきってことだよね」


そう言って、ぎこちなく笑いかける。
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