無愛想な同期の甘やかな恋情
「冴島」


あっさり引き下がった私が、投げやりになっていると思ったのだろうか。
彼は、私の意図を探るように、眉根を寄せる。


私は笑みを引っ込め、表情を引き締めた。
頬の辺りが強張ったのが、自分でもわかる。


穂高君が、私をジッと見つめている。
彼の視線に晒されて、ファイルを抱える腕に無意識に力を込めた。


逃げるように目を落とし、小さく息を吸う。
そうして、意を決して……。


「穂高君。私、失恋しちゃった」


思い切って、声に出した。


「……え?」


話題の変化を予測していなかったのだろう。
穂高君は、一瞬反応に困った様子で、硬い声で聞き返してきた。


「あ! だから、企画諦めるってわけじゃないよ。その……信じてくれないかもしれないけど、これは間中さんと創りたくて、考えた企画じゃないから」


明るくさらっと伝えるつもりだったのに、彼の反応を気にして緊張したせいで、少し喉に引っかかってしまった。
黙っている穂高君を探って、私はそっと目を上げた。
彼は大きな手で口を覆い、なんと言うか考えるように、黙っている。


「なんでそんな顔するの? 穂高君はわかってたでしょ? 間中さんと糸山さんが付き合い始めたこと」


穂高君は、「まあ……」と返事を濁した。
そして、躊躇うような間を置いてから、遠慮がちに質問してくる。
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