無愛想な同期の甘やかな恋情
「……好きだって、言ったのか? 間中さんに」


それを最後まで聞いてから、私は黙って首を横に振った。


「また、穂高君にウジウジって言われるから。失恋するにしても、せめて気持ちは伝えようって思った。……でも」

「だから、俺のこと好きになれって言ったんだ」


穂高君が、短い溜め息をつく。


「冴島が、間中さんに気持ち言えないまま失恋して、ショック受けるの見るくらいなら、って……」

「言えなかったんじゃない。言わなかったの」


なにかやるせないといった様子で畳みかけてくる彼を、私は落ち着いて遮った。
穂高君は、虚を衝かれたように、「え?」と短く聞き返してくる。


「四年前、私の企画のために実験してくれたこと、間中さん、覚えてなかった」


私は、ちょっと自嘲気味に笑った。


「報告書に、激励のメッセージを残してくれたことも」


穂高君が、こくっと喉を鳴らしたのが聞こえる。


「間中さんは、あの頃からたくさんの実験抱えてた。グループ長として、他のメンバーの案件も、進捗フォローしなきゃいけないから、どこから頼まれた実験だったかとか、覚えてなくても仕方がな……」

「わかってる。覚えててもらえなかったのが、ショックなんじゃない」


間中さんをかばう穂高君に、私はそう告げた。
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