無愛想な同期の甘やかな恋情
聞いたことがないくらい、声がひっくり返っている。


穂高君は私の腕を剥がそうと手をかけてくるけど、私は彼の髪に顔を埋めて、『嫌嫌』というように何度も首を横に振った。
彼の手に抵抗して、さらにぎゅうっと腕に力を込める。


「バカ。バカバカバカっ……!」


駄々をこねた子供みたいに、詰る言葉ばかりを繰り返す。
そんな私に呆れたのか。


「……はあ」


穂高君は前を向き、なんだか脱力しながら、渇いた溜め息を零した。


「人の背後に忍び寄ってきて、いきなり襲いかかって。その上『バカ』って何事?」


半分持て余すような言い方に、私はムッとする。


「バカじゃない」

「はあ? だから、お前、いきなりなに……」


いきなりと言えば確かにその通り。
私の行動の意味がわからないからか、穂高君が焦れたように声をあげた。
大きく振り返ってくる彼に、私は肩越しに顔を寄せて、キスをした。


「っ……」


触れた唇の先で、穂高君が小さく息をのむ。
そっと唇を離して上目遣いに見つめると、穂高君は困惑した様子で、口を手で覆った。


「……いきなり、なにをする」


くぐもった声で、私を咎めるように呟く。
予測不能な私の行動に、完全に戸惑っている彼から腕を離し、身体を起こしてしっかりと立つ。
胸いっぱいに広がった熱情に煽られないよう、必死に自分を抑え込みながら、ゆっくり口を開いた。
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