無愛想な同期の甘やかな恋情
長く続いた残暑が終わり、ようやく秋の気配が漂い始めた、十月初旬。
今日は、業務時間後に、『AQUA SILK』秋冬モデル販売開始に先駆け、社を挙げた出陣式が予定されている。


今や我が社の売り上げトップ、主力ブランドのイベントは、高級ホテルの宴会場で、華々しく盛大に行われる。
社長、副社長はもちろん、取締役陣もずらっと居並ぶ。


そのため、私もちょっとフォーマルな、ネイビーのワンピース姿。
日中社内で会った他のメンバーたちも、いつもよりわかりやすくおしゃれしていた。


出陣式の趣旨は、チームの営業、販売社員の激励、景気づけだけど、製作サイドの私たちの、慰労の意味合いもある。
この出陣式では、普段はお目にかかることもない会社のトップが、わりと気さくに声をかけてくれる。


立食形式で、食事も豪華で美味しい。
初めての時は緊張したけど、何度かこなしてみると、私にとって出陣式は窮屈なものではなく、むしろ毎回楽しみだったりするのだけど――。


「もう! 歩武君ってば!」


『一緒に行こう』と歩武君を誘うつもりで、早めに仕事を切り上げてラボを訪ねると、彼はなんの支度もしておらず、相変わらず実験の真っ最中だった。


「美紅、うるさい」


しかも、恋人の私に、なんとも素っ気ない口ぶり。
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