無愛想な同期の甘やかな恋情
「よくないの。私たちチームのためにしてくれることなんだよ?」

「営業の激励だろ?」


私が、掴まれた手を払おうとすると、その前にきゅっと力がこもった。


「私たち、製作サイドの慰労会でもあるんだってば!」

「あー……。どうでもいいけど、俺、そういう派手なの苦手なんだよ」

「人より派手な顔してるくせに、なに言ってるの。歩武君、自覚ないだけで、結構目立つんだから」


歩武君は、「は?」ときょとんと目を丸くしている。
私は歩武君には答えず、もう片方の手で彼の手を解いた。
そして、有無を言わさず、彼の髪に触れる。


なにがなんでも、連れていく。
私の意気込みが伝わったのか、歩武君は肩を竦めて溜め息をついた。


「俺、今までも出陣式は出たことないんだけど」

「え? そうだった?」


ボソッとボヤくのを聞いて、私は目を丸くした。
歩武君が、「うん」と頷いて返してくる。


「お偉いさん勢揃いの会なんて、堅苦しいだけで肩凝りそうだし」

「もう。そんなことないって。高級ホテルだし、お料理も豪華だよ〜。行けば、歩武君もきっと楽しめるから!」


そう窘めながら、彼の髪に指を通した。
触ってみるとわかるけど、癖のないまっすぐな髪は、驚くほど素直な質感。
ちょっと乱れたくらいなら、梳かすだけですぐに元通りだ。
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