無愛想な同期の甘やかな恋情
「珍しい。歩武、行くんだ?」


ニヤリと口角を上げる彼に、歩武君が太い溜め息で応える。


「冴島に、迎えに来られてしまったので」

「へえ~。そっか」

「必要な薬品あったら、適当に持って行ってください」


入れ違いでドアに歩いていく歩武君に、


「行ってらっしゃ~い」


間中さんが、ヒラヒラと手を振った。


「あ、じゃ、すみません」


私も彼に軽く頭を下げて、歩武君を追おうとすると……。


「冴島さん」

「え?」


名を呼ばれて、足を止める。
振り返ると、彼がどこか意地悪に目を細めた。


「これからは、歩武が研究室に一人でいる時に訪ねてくるなら、ドアの鍵は閉めておくことをお勧めするな」


白衣のポケットに両手を突っ込み、小首を傾げる間中さんに、私は瞬きを返す。
彼はスッと背を屈め、私にコソッと耳打ちした。


「口紅。剥げてるから、直していった方がいいよ?」

「……!!」


私はギョッとして目を剥いた。
私の反応を観察していた間中さんが、ぶぶっと吹き出す。


「ほら。社内一の『パートナー』に、エスコートしてもらっておいで」


彼はからかうように言って、私の肩をトンと押した。
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