無愛想な同期の甘やかな恋情
その反動で一歩前に出た私は、


「い、いい、行ってきますっ」


顔が真っ赤になるのを抑えられないまま、裏返った声で挨拶をして、まるで逃げるように歩武君を追いかけた。
先に廊下に出て待っていた歩武君が、紅玉リンゴも真っ青な私の顔を見て、「ん?」と怪訝そうに小首を傾げる。


「どうかした?」

「パートナーに、エスコートしてもらえって」


そっぽを向く私に、彼はきょとんとした顔をする。


「……口紅、剥げてるよって」

「……!」


私の二言目で、歩武君も合点したようだ。
ハッとしたように、大きな手で口を覆う。


「見られたな。きっと」

「っ……!!」


彼の独り言のような呟きに、私の体温は急激に上昇し、額に変な汗が浮かぶのを感じた。


「嘘……もう、やだ……」


頭のてっぺんから湯気が立ってるんじゃないかと思うほど、顔が熱い。
思わず両手で頬を押さえる私の前で、歩武君は「はは」と苦笑いをした。


「でも、いいな」


そう言って、私の肩に大きく腕を回してくる。


「ひゃっ」


私は一瞬よろけて、彼の肩口にトンと額をぶつけてしまった。


「も、もう! 言ってるそばから……!」


慌てて歩武君の腕から擦り抜けようとする私に。
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