一目惚れの彼女は人の妻
 打ち合わせの後、いつもより遅いランチを社屋内のカフェで加奈子とした。てっきり一人で食べる事になると思ったのだけど、今日は加奈子も仕事の都合で時間がずれたらしい。私は加奈子に俊君の事を話したくてうずうずしてたので、ちょうど良かった。

 スイーツたっぷりのパンケーキを戴きながら、私は今朝の出来事を話し始めた。

「今日ね、開発会社の人達と、うちのシステムの打ち合わせをしたのね」

「ああ、そうみたいね」

 あら? 加奈子は知ってる口ぶりだけど、なんでだろう。私は話してなかったのにな。

「知ってたの?」

「知らなかったけど、今朝知ったわ」

「どういう事?」

「私ね、さっきまで受付嬢だったのよ」

 加奈子はパンケーキを頬張りながら、ちょっとドヤ顔でそんな事を言った。

 受付は総務の一部署で、普段は加奈子の担当ではないけど、急に欠勤者がいたりすると、時々加奈子も受付をする事があると、前に聞いた事がある。今日もそうで、それでお昼の時間が伸びたらしい。

「それはそれは、ご苦労さまです」

「宏美は、その打ち合わせのメンバーだったの?」

「そうよ。ユーザー代表」

 今度は私が、加奈子の真似をしてドヤ顔をした。うまく出来たかは疑問だけど。

「だったら、宏美も見たっていうか会ったよね? すごいイケメン君と。彼、名前は何ていうの?」

 加奈子は、身を乗り出すようにして言った。目を爛々とさせて。
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