見上げる空は、ただ蒼く
お母さんは私の首に
まわしていた手を放す。
いきなり酸素が入りこんできて、
私はそのまましばらく荒い息を繰り返した。

「どちらさまですか。」

冷たいお母さんの声に
答えたのは私の大好きな声。

「結乃ちゃんの友達の奏
なんですけど、結乃ちゃん
は家にいますか。」

奏君だ。

「ごめんなさいね。結乃は
今はまだ帰ってきて......」

お母さんが奏君を追い返そう
とするのを遮るように、
私は大声で叫んだ。

「奏くん、助けて......!」

「失礼します!」

ぶつりとインターホンが途切れる。

次の瞬間、お母さんが必死で
とめるのも振り切って奏君が
私の方へ走ってきた。

「結乃ちゃん!大丈夫?」

「奏君......。」

ほっとして、涙が溢れる。
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