見上げる空は、ただ蒼く
そんな私を、奏君は
ふわりと抱き締めてくれた。

優しい温もりに包まれて、
私はぼろぼろと涙を零す。

そして直後に見た。
机を振り翳すお母さんの姿を。

「死ねぇぇぇぇぇぇえっ!」

どうしよう、このままじゃ...。

「奏君、危ないっ!」

奏君を庇うようにして私は
彼のほっそりとした身体を
抱き締めて横に転がった。

ガッシャァァァァァン!

狂ったように叫ぶお母さん。
自分の顔から流れる血。
呆然としている奏君。

怖い。怖い。怖い。

「結乃ちゃん、行こう。」

奏君に言われて、私たち2人は
お母さんをおいて家を飛び出した。

手を繋いで、知らない道だけを
選んでどこまでも走っていく。
お母さんの顔が頭から離れない。

でも。

繋いだ右手からは確かな暖かさが
伝わってきて、私に勇気をくれた。
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