千年愛歌
俺の胸がざわつき、急いでかぐやさんのもとへ向かう。人だかりができていたのですぐにわかった。

「かぐやさん、大丈夫?」

俺は人をかき分け、かぐやさんの肩を優しく叩いてその顔を覗き込む。かぐやさんの顔色は、病気と縁がない俺でも悪いとわかった。

「……大丈夫……です……。ただの貧血…です…」

かぐやさんは「大丈夫」と繰り返すが、心配の方が大きい。

俺は、考えるよりも先に体を動かしていた。かぐやさんの体に腕を回し、ゆっくりと持ち上げる。

「きゃー!お姫様抱っこ!!」

女子たちが騒ぎ、男子はポカンと口を開けている。

「沖田くん…大丈夫ですから…」

かぐやさんは恥ずかしそうに顔を赤らめる。俺の胸が高鳴った。

俺は安心させるように笑い、「大丈夫!俺が保健室に連れてくから!」と言い歩く。

保健室に向かって廊下を歩いている途中で、四時間目の授業が始まるチャイムが鳴った。

「沖田くん、私を下ろして授業に行ってください……」

「そんなことできるわけないよ!」

廊下を歩いている間、このやり取りが何度か続き、ようやく保健室に着いた。
< 13 / 25 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop