涙の数より空(キミ)が笑ってくれるなら。



「りょうた」



やっと呼び止めれたのは、ちょうど空き教室の前についた頃。

あのカップルが離れて前を歩いていたから勇気を出せた。


――あの、手



「……っ」



恥ずかしくて言えない。視線を繋いだ手に落とした。



「ふふっ……ごめんっ」



隠すような笑い声がしたあと、ゆっくりと温もりが離れていく。

顔を上げると、りょうたは口を手でおおい、くすくすと笑っていた。

ぐっと恥ずかしさが増す。



「……っ」



空が緊張してるって知っててわざと離さなかった。からかわれた。

……はい、りょうたの駄目なとこ見つけました! 完全にこれ!! うざいなぁ。

そう思うのに、やっぱりりょうたが笑うとこっちまでつられる。全然嫌な笑い方にならない。

空達が立ち止まっているのに気づいたのか、黒髪イケメンが後ろを振り返った。

りょうたを待ってるんだ。はやく行かないと。



「……じゃぁ、ね」



また後でね。そういいかけて口を閉じる。あぶない。またねは、奏にしか言わないって決めてるんだった。

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