涙の数より空(キミ)が笑ってくれるなら。


りょうたは心配そうに微笑む。

多分言いたいことが分かる。ぼっちの空を気遣って、一緒にご飯食べようとか、言おうとしてるんでしょ。



「あ」

「大丈夫だから」



遮る声が少し大きくなってしまった。

申し訳無さが残る空に、りょうたは持っていたものを差し出す。

目の前にポカポカと湯気がたった。



「またいつか、」



りょうたは空の手を取る。



「誰かとご飯を一緒に食べたくなったら、」



じんわりと温かい器が手の平に触れる。



「その時は俺を道連れにしてね。空ちゃん」



どこまでも無邪気な笑顔を残し、りょうたは小走りで駆けていく。

これ……、くれる、の?



「ぇっりょうたのご飯はっ!?」



はっとして慌てて背中に問いかける。

りょうたは振り返って、両腕で大きな丸を作った。



「親友が持ってくれてるー! 大丈夫ー!」

「ゆっくり食べてね〜〜! あっスプーンは横についてるからそれ使ってねーー!」



少し離れたところで大きく手を振るりょうたは、初めて会った時と何も変わらない。

変わったのは、名前の呼び方だけだ。

いや、



「……ふっ」



それ以外もきっと、変わってる。

< 101 / 160 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop