恋する耳たぶ

いや、まだ後ろ姿だし、試着した時にも見ているんだけどね。

まったくもって、破壊力が違う。

ああ、でも、こういう衣装って、多分全方向から良く見えるように作られているんだろうなぁ。

私の語彙力が貧弱なせいで、今のこの一瞬の感動を正しく伝えられないのがもどかしいけれど、シュッとしてキリッとしてパリッとしている、王子様みたいな後ろ姿。

待ち合わせた時なんかに感じるドキドキとはまた違う感じの緊張感で、体が硬直する。

「ささ、出ますよ」

急かす調子のスタッフさんに力強く腰を押されて、つんのめるようにエレベーターを出ると、その声に気づいたのか、螺旋階段を見下ろすように手すりに肘をついていた匡さんが、ゆっくりとこちらを振り向いた。


その瞬間は、まさに映画みたいなスローモーションで。

私はあんぐりと鯉のように口を開け、さらに、息を飲み、匡さんを見つめるしかない。

キューピッドかなんかに、心臓を射抜かれちゃったような感じで。



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