【完】絶えうるなら、琥珀の隙間
「書簡には、我が国の周りは地形的に足場が悪い場所が多々あるので、ハヤセミ達に道案内をさせますと書いてあったのだよ」
翠は肩をすくめながらそう説明をした。
「そこまで書いてあって、特別な理由も無くむやみにその好意を跳ねのけるわけにもいかない」
「なるほど……あの得体の知れない者達をこの国に長く置いておくなど、私達が嫌がるだろうと予想しての事ですな」
タケルが考え込みながら、そう呟いた。
翠は「そうだ」と頷き、忌々しそうに眉を顰める。
「まあ確かに、あの者達に変に嗅ぎまわられても困る……大方、私達にまともに考える時間を与えないために言ってきたのだろうな」
黙り込むカヤとタケルに、翠は更に言葉を紡いだ。
「しかもな、書簡にはまだ続きがあってな」
「ま、まだあるのですか……?」
これ以上悪い知らせがあるのか、とタケルの表情がなんとも情けないものになった。
無意識にだろうか。翠は手にしていた書簡を握りつぶすと、辟易した様子で言った。
「カヤを返すのが嫌なら、私に嫁いで来いだと」
今度こそ時が止まった。
そして、その凍るような空気を破ったのはタケルの恐ろしい声だった。
「……む、むむ、むすめえええッ!」
あまりにも突然に、タケルに勢い良く肩を捕まれた。
「ひっ」
思わず悲鳴めいた声が口から漏れる。
太い指がカヤの肩に強く食い込むが、痛いと思う間もなく、
「お主っ、まさか、このためにわざと翠様に近づいたのではあるまいなあああ!?」
がっくんがっくん揺さぶられた。
脳みそがかき混ぜられるような激しい振動に、意識が飛んでいきそうになる。
「ち、ちがっ……違いますっ……そんな事、するわけっ……!」
必死に否定の言葉を吐くが、怒りで我を忘れているようなタケルは一切聞き耳を持たない。
「本当の事を吐くのだ!翠様を嫁になどっ、ふざけるのも大概に……!」
「やめろ馬鹿者!」
勢いよく割り込んできた翠が、一瞬でタケルをカヤから引き剥がした。
自由になったカヤは、あまりの眩暈にふらふらとその場に座り込む。
「短絡的に物事を判断するなといつも言っているだろう!少しは冷静になれ!」
ハヤセミと話していた時は一切動揺を見せなかった翠が、今日一番に怒りを露わにした。
鋭く怒鳴られ、タケルはたじたじとした様子で身を引く。
「いいか、タケル。カヤに世話役をしてほしいと持ち掛けたのは私だ」
翠はタケルに言い聞かせるようにそう言う。
翠は肩をすくめながらそう説明をした。
「そこまで書いてあって、特別な理由も無くむやみにその好意を跳ねのけるわけにもいかない」
「なるほど……あの得体の知れない者達をこの国に長く置いておくなど、私達が嫌がるだろうと予想しての事ですな」
タケルが考え込みながら、そう呟いた。
翠は「そうだ」と頷き、忌々しそうに眉を顰める。
「まあ確かに、あの者達に変に嗅ぎまわられても困る……大方、私達にまともに考える時間を与えないために言ってきたのだろうな」
黙り込むカヤとタケルに、翠は更に言葉を紡いだ。
「しかもな、書簡にはまだ続きがあってな」
「ま、まだあるのですか……?」
これ以上悪い知らせがあるのか、とタケルの表情がなんとも情けないものになった。
無意識にだろうか。翠は手にしていた書簡を握りつぶすと、辟易した様子で言った。
「カヤを返すのが嫌なら、私に嫁いで来いだと」
今度こそ時が止まった。
そして、その凍るような空気を破ったのはタケルの恐ろしい声だった。
「……む、むむ、むすめえええッ!」
あまりにも突然に、タケルに勢い良く肩を捕まれた。
「ひっ」
思わず悲鳴めいた声が口から漏れる。
太い指がカヤの肩に強く食い込むが、痛いと思う間もなく、
「お主っ、まさか、このためにわざと翠様に近づいたのではあるまいなあああ!?」
がっくんがっくん揺さぶられた。
脳みそがかき混ぜられるような激しい振動に、意識が飛んでいきそうになる。
「ち、ちがっ……違いますっ……そんな事、するわけっ……!」
必死に否定の言葉を吐くが、怒りで我を忘れているようなタケルは一切聞き耳を持たない。
「本当の事を吐くのだ!翠様を嫁になどっ、ふざけるのも大概に……!」
「やめろ馬鹿者!」
勢いよく割り込んできた翠が、一瞬でタケルをカヤから引き剥がした。
自由になったカヤは、あまりの眩暈にふらふらとその場に座り込む。
「短絡的に物事を判断するなといつも言っているだろう!少しは冷静になれ!」
ハヤセミと話していた時は一切動揺を見せなかった翠が、今日一番に怒りを露わにした。
鋭く怒鳴られ、タケルはたじたじとした様子で身を引く。
「いいか、タケル。カヤに世話役をしてほしいと持ち掛けたのは私だ」
翠はタケルに言い聞かせるようにそう言う。