【完】絶えうるなら、琥珀の隙間
「ひ、う」
唐突に翠の顔が近づいてきて、思わず上げかけた悲鳴は、彼によって呑みこまれた。
手首を押さえる手は厳しいのに、なんと唇の優しい事か。
戸惑いを撫でつけるような緩やかな口付けが、不本意にもカヤの身体から力を吸い取っていく。
ついばむ様に吸われ、離れてはまた触れ、そんな戯れを繰り返す内に、いつの間にか翠の拘束は解かれていた。
だと言うのに、この役立たずの腕は抵抗を示してくれない。
それどころか、まるで別の生き物のように、勝手に翠の首元に抱きすがる始末。
「す、いっ……」
口付けの合間、あられも無い声で呼んでしまった。
――――途端、たおやかな唇が牙を剥く。
ぬるり、と肉厚な何かが咥内に入り込んできた。
「っ、」
驚いて瞼を開くと、ほんのすぐ傍で翠と視線がかち合った。
嗚呼、見られていたのだ、と悟る。
拒絶することも忘れて、一心不乱に翠に溺れていた恥ずかしい顔を、ずっと。
カッ、と頬が熱くなって、叫びそうになった。
しかし侵入している舌は、言葉を発する事を許さなかった。
逃げるカヤを執拗に追いかけまわして、散々に辱めて、そしてカヤの意識を溶かしきった後、ようやく動きを緩めた。
去り際に一際強く舌を吸って、ずるり、と翠が這い出ていく。
「――――はっ……」
翠の真っ赤な唇は、暗闇でも分かる程に艶やかに濡れていた。
(私ので濡れてる)
そう自覚して、あまりの美麗さにくらくらした。
まるで熟した果実だ。枝に成る、瑞々しい湿果。
やがてその果実はゆっくりと落下し、カヤの首筋に着地すると、舌で皮膚をねぶりはじめた。
こそばゆい感覚に身を捩るが、組み伏せられている翠の下からは抜け出せない。
行く先々で皮膚を湿らせながら、翠の頭はどんどん下降していく。
「ちょ、待って、翠っ……」
すっかり投げ捨てていた抵抗を慌てて再開したが、遅かった。
剥き出しだった胸の先端に、翠の唇が触れた。
「ひぃやあっ」
未だかつてないような感触に、色気も何も無い間抜けな悲鳴が飛び出てきた。
「ま、まま、待って、待って、待って下さい!」
思わず敬語で懇願してしまう程、カヤの許容量はとっくに超えていた。
必死に翠を退かそうと肩を押すが、びくともしない。
それどころか翠は、閉じていたカヤの太ももの間に足を割り込ませてきた。
ぐ、と膝を使って足をこじ開けられた時、恐怖のあまり全身が震えた。
「だめだよ、こんなの……ねえ、翠っ……翠!」
揺らぎに揺らいだ、泣き声交じりの声だった。
翠の右手が、胸を、脇腹を、腰を滑り落ち、そして太ももの内側を何度も撫ぜる。
その度に跳ねあがる身体ごと抱き込むくせに、凶暴な右手は退きはしない。
翠は、もう何も言わなかった。
胸元に埋まった顔は、こちらを見ようとさえしない。
唐突に翠の顔が近づいてきて、思わず上げかけた悲鳴は、彼によって呑みこまれた。
手首を押さえる手は厳しいのに、なんと唇の優しい事か。
戸惑いを撫でつけるような緩やかな口付けが、不本意にもカヤの身体から力を吸い取っていく。
ついばむ様に吸われ、離れてはまた触れ、そんな戯れを繰り返す内に、いつの間にか翠の拘束は解かれていた。
だと言うのに、この役立たずの腕は抵抗を示してくれない。
それどころか、まるで別の生き物のように、勝手に翠の首元に抱きすがる始末。
「す、いっ……」
口付けの合間、あられも無い声で呼んでしまった。
――――途端、たおやかな唇が牙を剥く。
ぬるり、と肉厚な何かが咥内に入り込んできた。
「っ、」
驚いて瞼を開くと、ほんのすぐ傍で翠と視線がかち合った。
嗚呼、見られていたのだ、と悟る。
拒絶することも忘れて、一心不乱に翠に溺れていた恥ずかしい顔を、ずっと。
カッ、と頬が熱くなって、叫びそうになった。
しかし侵入している舌は、言葉を発する事を許さなかった。
逃げるカヤを執拗に追いかけまわして、散々に辱めて、そしてカヤの意識を溶かしきった後、ようやく動きを緩めた。
去り際に一際強く舌を吸って、ずるり、と翠が這い出ていく。
「――――はっ……」
翠の真っ赤な唇は、暗闇でも分かる程に艶やかに濡れていた。
(私ので濡れてる)
そう自覚して、あまりの美麗さにくらくらした。
まるで熟した果実だ。枝に成る、瑞々しい湿果。
やがてその果実はゆっくりと落下し、カヤの首筋に着地すると、舌で皮膚をねぶりはじめた。
こそばゆい感覚に身を捩るが、組み伏せられている翠の下からは抜け出せない。
行く先々で皮膚を湿らせながら、翠の頭はどんどん下降していく。
「ちょ、待って、翠っ……」
すっかり投げ捨てていた抵抗を慌てて再開したが、遅かった。
剥き出しだった胸の先端に、翠の唇が触れた。
「ひぃやあっ」
未だかつてないような感触に、色気も何も無い間抜けな悲鳴が飛び出てきた。
「ま、まま、待って、待って、待って下さい!」
思わず敬語で懇願してしまう程、カヤの許容量はとっくに超えていた。
必死に翠を退かそうと肩を押すが、びくともしない。
それどころか翠は、閉じていたカヤの太ももの間に足を割り込ませてきた。
ぐ、と膝を使って足をこじ開けられた時、恐怖のあまり全身が震えた。
「だめだよ、こんなの……ねえ、翠っ……翠!」
揺らぎに揺らいだ、泣き声交じりの声だった。
翠の右手が、胸を、脇腹を、腰を滑り落ち、そして太ももの内側を何度も撫ぜる。
その度に跳ねあがる身体ごと抱き込むくせに、凶暴な右手は退きはしない。
翠は、もう何も言わなかった。
胸元に埋まった顔は、こちらを見ようとさえしない。