【完】絶えうるなら、琥珀の隙間
見下ろすと、ミナトに抱っこされたままのトバリが、カヤの腕をぺちぺちと叩いている。
「へ?なあに?」
少し屈んで目線を合わせると、ぷっくりとしたトバリの唇が何か音を発した。
「あっこ」
「……あっこ?」
カヤが首を傾げると、サヨがくすくすと笑い出した。
「あらあら。この子ってば、カヤ様に抱っこして欲しいみたいです。良かったら抱いてあげてくれませんか?」
その瞬間、トバリが『抱っこ』と言いたかったのだと分かった。
「え、ええ?でも私、小さい子を抱っこしたことなんてっ……」
勢い良く首を横に振るが、ミナトは笑いながらトバリを近づけてきた。
「ほれ、ちゃんと支えてるから」
「え、でも……」
果たして、自分なんかが抱っこしてしまっても大丈夫なのだろうか。
困り果ててサヨを見ると、彼女は微笑みながら一度頷いてくれた。
それを見たカヤは少し安心し、おずおずとトバリに手を伸ばした。
ミナトに支えてもらいつつ、トバリをしっかりと抱く。
ずし、とした人間の重みを感じた。
なんて愛おしい重さなんだろう。
トバリは安心しきったようにカヤの腕に抱かれ、衣をぎゅっと握ってきた。
小さな指の、なんと力の強い事か。
「……へへ、あったかいし、良い匂いがする」
少し緊張しながらも、カヤは思わず頬を緩ませた。
トバリからは、なんだか懐かしい匂いがした。
きっと、お母さんのお乳の匂いだ。
もう覚えているはずもないのに、不思議とそれが分かった。
「子供って体温高いよな」
そう言ってミナトが微笑む。
「うん!可愛いなあ……」
黒目がちに潤んだ眼も、ふっくらとした美味しそうな頬も、小さな鼻も、全てが可愛かった。
(あの子達の眼と似てる)
それはまるで、馬達を前にしている時のようだった。
そうか。トバリの眼はどこまでも純粋なのだ。馬達のそれと同じように。
不意にトバリが手を伸ばし、カヤの髪に触れた。
「ひ、さまー」
「ん?」
またもや発せられたトバリ語に首を捻ると、サヨが言った。
「ふふ。カヤ様の髪がお日様みたい、って言っています」
「え……」
驚いて言葉を失うカヤに、トバリがニコッと万遍の笑みを浮かべた。
「きれー」
息を飲んだ。
――――綺麗、と。
トバリがくれたその言葉が、あまりにも真っすぐすぎて。
「へ?なあに?」
少し屈んで目線を合わせると、ぷっくりとしたトバリの唇が何か音を発した。
「あっこ」
「……あっこ?」
カヤが首を傾げると、サヨがくすくすと笑い出した。
「あらあら。この子ってば、カヤ様に抱っこして欲しいみたいです。良かったら抱いてあげてくれませんか?」
その瞬間、トバリが『抱っこ』と言いたかったのだと分かった。
「え、ええ?でも私、小さい子を抱っこしたことなんてっ……」
勢い良く首を横に振るが、ミナトは笑いながらトバリを近づけてきた。
「ほれ、ちゃんと支えてるから」
「え、でも……」
果たして、自分なんかが抱っこしてしまっても大丈夫なのだろうか。
困り果ててサヨを見ると、彼女は微笑みながら一度頷いてくれた。
それを見たカヤは少し安心し、おずおずとトバリに手を伸ばした。
ミナトに支えてもらいつつ、トバリをしっかりと抱く。
ずし、とした人間の重みを感じた。
なんて愛おしい重さなんだろう。
トバリは安心しきったようにカヤの腕に抱かれ、衣をぎゅっと握ってきた。
小さな指の、なんと力の強い事か。
「……へへ、あったかいし、良い匂いがする」
少し緊張しながらも、カヤは思わず頬を緩ませた。
トバリからは、なんだか懐かしい匂いがした。
きっと、お母さんのお乳の匂いだ。
もう覚えているはずもないのに、不思議とそれが分かった。
「子供って体温高いよな」
そう言ってミナトが微笑む。
「うん!可愛いなあ……」
黒目がちに潤んだ眼も、ふっくらとした美味しそうな頬も、小さな鼻も、全てが可愛かった。
(あの子達の眼と似てる)
それはまるで、馬達を前にしている時のようだった。
そうか。トバリの眼はどこまでも純粋なのだ。馬達のそれと同じように。
不意にトバリが手を伸ばし、カヤの髪に触れた。
「ひ、さまー」
「ん?」
またもや発せられたトバリ語に首を捻ると、サヨが言った。
「ふふ。カヤ様の髪がお日様みたい、って言っています」
「え……」
驚いて言葉を失うカヤに、トバリがニコッと万遍の笑みを浮かべた。
「きれー」
息を飲んだ。
――――綺麗、と。
トバリがくれたその言葉が、あまりにも真っすぐすぎて。